長谷観音の名で親しまれる古刹「長谷寺」周辺のカフェ・ランチスポットも解説
江ノ電・長谷駅から徒歩わずか3分。
海光山慈照院長谷寺は、神奈川県鎌倉市長谷にある浄土宗系の単立寺院で、地元では「長谷観音」の名で親しまれている。知名度・人気ともに鎌倉屈指の観光寺院で、寺院ランキングでも上位に挙げられることが多く、鎌倉大仏で知られる高徳院とあわせて「長谷エリア」を代表する二大スポットとなっている。
長谷寺の歴史
寺伝によれば創建は736年(天平八年)、開基は藤原房前、開山は徳道と伝わる。徳道は大和(奈良)の長谷寺の創建にも関わった僧で、仏師の稽主勲・稽文会に命じて一本の楠(クスノキ)から2体の十一面観音像を彫らせたという。1体は奈良の長谷寺に安置され、もう1体は人々の救済を祈願して海に流された。その像が736年に相模国長井村(現在の横須賀市長井)に流れ着き、これを鎌倉に移し祀ったのが鎌倉・長谷寺の始まりとされる。もっとも、この開創譚がそのまま史実とは考えにくく、実際の創建年代は明らかになっていない。
一方、境内に伝わる梵鐘の銘には1264年(文永元年)の年紀があり、この銘文に「新長谷寺」と記されていることから、奈良の長谷寺をモデルとして建立されたと考えられている。この梵鐘の存在により、少なくとも鎌倉時代後期にはすでに寺院として成立していたことは確実とされる。なお現在の長谷寺は浄土宗系の単立寺院であり、真言宗豊山派の総本山である奈良の長谷寺との間に宗派上のつながりはない。
その後、1200年(正治二年)には鎌倉幕府の有力御家人であった大江広元の支援によって諸堂が再建されたと伝わる。時代が下って江戸時代初期には徳川家康による再興があったとされ、1645年(正保二年)には小浜藩主で幕府老中を務めた酒井忠勝が伽藍の修復を指示するなど、武家政権や大名の庇護を受けながら維持されてきた歴史を持つ。
見どころ
境内の中心となる本堂(観音堂)には、高さ9m以上を誇る本尊・十一面観音立像が安置される。右手に錫杖、左手に蓮華の花瓶を持つ姿は圧巻で、奈良の長谷寺の観音像と同木から作られたと伝わる由緒を持つ一方、現存する像の制作年代は明らかでなく、一部は室町期のものとされている。
観音堂の右手に位置する阿弥陀堂には、源頼朝が42歳の厄除けのために造らせたという伝承を持つ阿弥陀如来坐像が安置されている。かつて長谷にあった誓願寺(現存せず)の本尊だったとも伝えられ、鎌倉六阿弥陀の一つとして「厄除阿弥陀」の別名でも知られる。
阿弥陀堂の脇には鐘楼があり、吊るされている梵鐘は1984年(昭和五十九年)に新たに鋳造されたもの。鎌倉で三番目に古いとされるオリジナルの梵鐘(1264年鋳造、鋳物師・物部季重の銘)は、現在は境内の観音ミュージアムに収蔵・保管されている。この博物館では、長谷寺に伝わる仏教美術や仏教彫刻、古文書、重要文化財に指定された十一面観音懸仏なども見ることができ、拝観料とは別に入館料(大人300円、子供150円)が必要になる。開館時間は9時から16時30分までで、毎週火曜日(祝日の場合は翌日)が休館日となっている。
そのほかの見どころとしては、経蔵(輪転蔵)内部の回転式書架「輪蔵」がある。この輪蔵には一切経が収められており、一回転させるだけで一切経をすべて読んだのと同じ功徳が得られると伝えられている。壁面にはマントラが刻まれたマニ車も設置されており、こちらも回すことで読経と同じ効果があるとされる。境内の稲荷社「かきがら稲荷」は、本尊の観音像が海を漂っていた際に像に付着し、この地へ導いたという「かきがら稲荷大明神」を祀る社だ。岩盤をくり抜いた洞窟「弁天窟」には弁財天とその眷属の彫刻が施されており、出口付近は天井がかなり低いため頭をぶつけないよう注意したい。江ノ島・鎌倉七福神の一つである大黒天を祀る「大黒堂」も見逃せない一角で、応永十九年(1412年)の銘を持つ最古の大黒天像は現在観音ミュージアムに移されている。
長谷寺は花の名所としても知られ、妙智池周辺の庭園では桜、藤、牡丹、花菖蒲、百日紅、桔梗、彼岸花、蠟梅、水仙、椿、梅など季節ごとにさまざまな植物が楽しめる。特に経蔵奥の眺望散策路には40種類以上・約2,500株のあじさいが植えられており、相模湾を一望できる高台の見晴らしのよさとあわせて、あじさいの名所として全国的にも知られる存在だ。シーズン中は多くの参拝者で混み合うため、時間に余裕をもって訪れるのがおすすめとなる。秋には境内の紅葉のライトアップも行われ、四季を通じて異なる表情を楽しめる寺院となっている。
拝観情報・御朱印
拝観時間は3〜9月が8時〜17時、10〜2月が8時〜16時30分。拝観料は大人300円、小学生100円で、団体(30名以上)は50円引きとなる。境内の観音ミュージアムは別途入館料(大人300円、子供150円)が必要で、毎週火曜日(祝日の場合は翌日)が休館日にあたる。
御朱印は「十一面大悲殿」(坂東三十三箇所第四番・鎌倉三十三観音霊場四番)、「出世開運大黒天」(鎌倉江の島七福神)、「厄除け阿弥陀如来」の3種類があり、いずれも1件300円。かつては弘法大師相模二十一ヶ所第十二番の御朱印もあったとされるが、現在も授与されているかは不明という。御朱印は境内に入ってすぐ左手の朱印所で受け付けており、混雑時は仕上がりまで時間がかかることもあるため、拝観前に御朱印帳を預けておくのがおすすめだ。もみじ柄やあじさい柄のオリジナル御朱印帳のほか、坂東三十三観音霊場専用の御朱印帳(無地1100円、金地1700円)も授与されている。
アクセス・駐車場
江ノ電長谷駅から徒歩約3分。改札前の道を大仏方面へ進み、看板に従って左折すればすぐに山門が見えてくる。JR・江ノ電鎌倉駅からは徒歩約25分で、鎌倉駅西口を出てロータリー左手の御成通りに入り、突き当りを右に曲がって由比ヶ浜通り商店街を進むと入口にたどり着く。鎌倉駅からはバス利用も便利で、西口バス乗り場から江ノ電バス(1番乗り場)または京急バス(6番乗り場)に乗り、「長谷観音」バス停で下車する。
車で訪れる場合は境内入口横に拝観者専用駐車場があり、営業時間は拝観時間と同じく3〜9月が8時〜17時、10〜2月が8時〜16時30分。料金は普通車300円/30分、バス1000円/30分で、1時間を超えると料金が倍額になる点には注意したい。満車の場合や長時間駐車したい場合は、周辺のコインパーキングを利用するのがよいだろう。近隣には光則寺や御霊神社、鎌倉大仏で有名な高徳院もあり、あわせて巡るのもおすすめだ。
長谷寺周辺のランチスポット3選
長谷寺の参拝前後には、長谷駅から徒歩圏内に点在する個性豊かな食事処に立ち寄りたい。
しゃもじ 長谷寺から徒歩数分の場所にある、地元でも評判の定食店。名物はしらす丼とアジフライで、相模湾で水揚げされた新鮮なしらすをたっぷり使った丼は、鎌倉らしい海の幸を気軽に味わえると人気だ。カラッと揚がったアジフライを単品や定食で選べるほか、日替わりの惣菜がつくメニューも豊富に用意されており、観光の合間にさっと立ち寄って満足感のある一食をとりたいときに重宝する。座席数はさほど多くないため、混雑しやすい時間帯を避けて訪れるのがおすすめだ。
北橋 古い邸宅を改装した趣のある空間で、そば会席をゆったりと味わえる一軒。観光客で賑わう長谷エリアの中でも落ち着いた雰囲気が保たれており、蕎麦の香りと丁寧に引かれた出汁が効いた一品一品を、手入れの行き届いた庭を眺めながら味わうことができる。コースでいただくそば会席は品数も多く、単なる立ち寄りランチというよりも、旅の思い出に残る特別な食事の時間を演出してくれる。予約をしてから訪れると、待ち時間なくゆったり過ごせるだろう。
なぎさのハンバーガー 由比ヶ浜にほど近い立地で、海辺の散策とあわせて訪れる観光客も多いハンバーガー専門店。ボリュームのあるパティとカリッと香ばしく焼き上げたバンズの組み合わせが人気で、シンプルながら素材の味をしっかり感じられる一品に仕上がっている。テイクアウトして浜辺のベンチや砂浜に腰を下ろし、潮風を感じながら頬張るのも鎌倉ならではの楽しみ方だ。長谷寺や大仏を巡ったあとに、海を眺めながら小腹を満たすのにちょうどよいスポットになっている。
長谷寺周辺のカフェスポット3選
参拝後にひと息つくなら、長谷の路地に隠れた個性的なカフェを訪れてみたい。
蕪珈琲(カブラコーヒー) 長谷駅から歩いてすぐ、収玄寺の境内にたたずむ古民家をリノベーションした隠れ家カフェ。看板メニューの蕪フルーツサンドや自家製レモンケーキは、こだわりの生クリームを惜しみなく使った逸品で、甘さと素材の風味のバランスが評判になっている。寺院の境内という立地ならではの静けさが漂い、参拝の合間に喧騒を離れてほっとひと息つける空間として、観光客だけでなく地元の人にも親しまれている。 (公式Instagram:@kaburacoffee)
手ぬぐいカフェ 一花屋(いちげや) 御霊神社のすぐ近く、長谷駅から徒歩5分ほどの場所にある。畳敷きの広々とした座敷から、緑豊かな中庭を眺められるのが最大の魅力で、靴を脱いでゆったりくつろげる造りになっている。発酵食品を使ったスイーツやカレーが人気で、酒粕を使ったレモンケーキなどオーガニック志向のメニューが揃う。店名の通り、手ぬぐいなどの雑貨も扱っており、食事や喫茶と合わせてお土産探しにも立ち寄りたい一軒だ。 (公式Instagram:@ichigeya_kamakura / オンラインショップ)
Cafe Luonto(カフェ ルオント) 長谷駅を出て由比ヶ浜方面へ向かう川沿いの細道にあり、江ノ電の線路のすぐ脇に位置する。北欧風のインテリアでまとめられた心地よい店内から、ガタゴトと走り抜ける江ノ電を間近に眺めながらコーヒーを楽しめる、鎌倉らしい古都の風景と北欧の異国情緒を同時に味わえる一軒だ。窓際の席は特に人気で、電車の時刻表を気にしながら通過の瞬間を狙って写真を撮る人の姿も見られる。 (公式Instagram:@cafe_luonto)
長谷寺周辺のウォーキングスポット3選
長谷エリアは寺社と海が近く、徒歩での散策に向いている。長谷寺とあわせて巡りたい3スポットを紹介する。
由比ヶ浜海岸 長谷駅・由比ヶ浜駅のどちらからも徒歩圏内に広がる、鎌倉を代表する海岸。江ノ電の車窓からもその青さが望めるほど近く、海沿いの遊歩道を歩けば富士山や江の島を望む開放的な景色が広がる。夏場は海水浴客で賑わう一方、それ以外の季節は犬の散歩やジョギングを楽しむ地元の人々の姿も多く、鎌倉の日常の風景に触れられる場所でもある。波打ち際まで下りて砂浜を歩けば、寺社巡りで火照った足を休めるのにもちょうどよい。夕暮れ時に空と海がオレンジ色に染まる時間帯の散歩は特に人気が高く、多くの写真愛好家も足を運ぶ。 (公式ページ:海水浴場 – 鎌倉市)
御霊神社 長谷寺から歩いて8分ほど、承久元年(1219年)に鎌倉幕府3代執権・北条泰時が創建したと伝わる古社。祭神は平安時代後期の武将・鎌倉権五郎景政で、地域の鎮守として古くから信仰を集めてきた。すぐ脇を江ノ電が走り抜ける踏切の光景は鎌倉を象徴する定番の撮影スポットとしても広く知られ、初夏に境内の紫陽花が咲き誇る時期には、電車と紫陽花を一緒に収めようと多くの人で賑わう。境内自体はこぢんまりとしているため、静かに参拝したい場合は電車が来ない時間帯を選ぶとよいだろう。 (公式ページ:御霊神社 – 神奈川県神社庁)
由比ガ浜大通り 鎌倉駅前と長谷駅周辺を結ぶ、江ノ電と並行して走る通り。この通り沿いには鎌倉文学館、光則寺、成就院、極楽寺、大仏で知られる高徳院などが点在しており、由比ヶ浜駅を起点にゆっくり歩けば数時間かけて古都鎌倉らしい寺社巡りと昭和レトロな街並みを一度に味わえる、定番の散歩コースとなっている。道沿いには個人経営の雑貨店や食事処も多く、寄り道をしながらのんびり歩を進めるのに向いている。長谷寺参拝とあわせて、午前は寺社、午後は海沿いというように一日かけて巡る観光客も多い。 (公式サイト:鎌倉由比ガ浜商店街)
長谷寺を中心にしたモデル散策コース
長谷寺と周辺スポットを効率よく巡るなら、次のような半日コースが組みやすい。まず午前中に長谷駅から長谷寺を参拝し、あじさいや庭園、観音ミュージアムをじっくり見学する。参拝後は徒歩数分の「しゃもじ」や「北橋」でランチをとり、腹ごしらえをしてから御霊神社へ向かい、江ノ電の踏切と紫陽花の組み合わせを楽しむ。そこから由比ヶ浜海岸まで足を延ばして海風に当たり、帰りは「蕪珈琲」や「手ぬぐいカフェ 一花屋」で甘味とお茶の時間を過ごせば、寺社・グルメ・海の景色をバランスよく楽しめる一日になる。時間に余裕があれば、大仏で知られる高徳院や光則寺まで由比ガ浜大通りを歩いて足を延ばすのもおすすめだ。長谷エリアは坂道が少なく歩きやすいため、スニーカーなど歩きやすい靴を選んで訪れるとよいだろう。
寺社の歴史や仏像に触れる時間と、地元の食やカフェ、海辺の風景を組み合わせることで、長谷エリアは一日楽しめる観光地になる。次に鎌倉を訪れる際のプランの参考にしてほしい。
周辺情報の参照:
- 長谷寺(鎌倉)周辺の美味しいランチ14店! – 一休.comレストラン
- 長谷寺付近の美味しいランチ20選 – Retty
- 鎌っこらいふ 長谷カフェ12選
- 長谷寺(長谷観音)周辺でおすすめのカフェ・喫茶店 – 食べログ
- 鎌倉-長谷ゆっくり歩いて30分!「由比ガ浜大通り」の魅力 – トラベルjp
- 由比ヶ浜・長谷の観光スポット&基本情報 – まっぷるウェブ
